Kinsho税理士/社会保険労務士事務所の金正有史です。
このコラムでは、経営者の方が知っておきたい税務や会社経営のポイントを、できるだけ分かりやすくお伝えしています。
今回は、「 役員貸付金 」について解説します。
「 決算書に役員貸付金と書かれているけれど問題ないの? 」
「 会社のお金を一時的に使っただけでも役員貸付金になる? 」
「 銀行融資に影響すると聞いたけれど本当? 」
創業間もない経営者の方から、このようなご相談をいただくことがあります。
役員貸付金は、中小企業の決算書でよく見かける項目です。
しかし、内容をよく理解しないまま放置していると、税務上だけでなく金融機関からの評価や会社の資金繰りにも影響する可能性があります。
この記事では、
「 役員貸付金とは何か、なぜ注意が必要なのか、そして経営者が押さえておきたい実務上のポイント 」
について分かりやすく解説します。
- 役員貸付金とは何か
- 役員貸付金が発生する原因
- 役員貸付金が危険と言われる理由
- 役員貸付金を減らすための実務上の対策
役員貸付金とは?
役員貸付金とは、会社が社長や役員に対してお金を貸している状態をいいます。
例えば、
・会社の口座から生活費を引き出した
・個人的な買い物を会社のお金で支払った
・会社のお金を一時的に借りた
といった場合に発生することがあります。
経営者の感覚としては、
「後で返すつもりだった」
「少し借りただけだった」
というケースも少なくありません。
しかし、会社と社長は法律上別の存在です。
会社のお金を個人的な目的で使用した場合、会計上は役員貸付金として処理される可能性があります。
結論|役員貸付金はできるだけ発生させないことが重要です
結論からお伝えすると、役員貸付金はできるだけ発生させず、発生した場合も早めに解消することが重要です。
理由は主に次の3つです。
| 項目 | 主な影響 |
| 税務 | 認定利息などの問題が生じる可能性がある |
| 融資 | 金融機関の評価が下がる場合がある |
| 経営 | 会社の資金繰りを悪化させる可能性がある |
役員貸付金は単なる会計上の数字ではありません。
会社のお金の管理状況を示す指標の一つとして見られることがあります。
役員貸付金が発生する主な原因
■ 会社と個人のお金が混在している
最も多い原因は、会社のお金と社長個人のお金が明確に分かれていないケースです。
例えば、
・会社口座から生活費を引き出す
・会社のカードで私的な支出をする
・個人的な旅行代金を会社から支払う
といったケースです。
創業期には珍しくありませんが、積み重なると大きな金額になることがあります。
■ 役員報酬が不足している
生活費が必要にもかかわらず、役員報酬を低く設定しすぎている場合もあります。
その結果、
「とりあえず会社から借りる」
という状態が続き、役員貸付金が増加するケースがあります。
■ 記帳処理の誤り
本来は経費や役員報酬として処理すべきものが、誤って役員貸付金になっているケースもあります。
決算書を確認すると、長期間残ったままになっていることがあります。
役員貸付金が危険と言われる理由
■ 金融機関の評価に影響することがある
金融機関は融資審査の際に決算書を確認します。
その際、役員貸付金が多額に計上されていると、
「会社のお金の管理が適切ではないのではないか」と見られることがあります。
特に創業期や融資を検討している会社では注意が必要です。
■ 会社の資金繰りを圧迫する
役員貸付金は、会社から見ると回収すべきお金です。
つまり、そのお金は本来会社の運転資金として使えたはずのお金でもあります。
金額が大きくなると、
・納税資金
・仕入資金
・人件費
などに影響する可能性があります。
■ 税務上の問題になることがある
税務調査では、役員貸付金の内容が確認されることがあります。
例えば、
・本当に貸付なのか
・返済の意思があるのか
・利息の設定は適切か
などです。
税務署は形式だけでなく実態を重視して確認しています。
実際の調査現場でも、多額の役員貸付金が長期間放置されている場合は、その経緯や内容を確認することがあります。
もちろん役員貸付金があるだけで問題になるわけではありません。
しかし、説明できない状態は避けるべきです。
役員貸付金を減らすための実務上の対策
役員貸付金を防ぐためには、日頃からお金の管理を徹底することが重要です。
具体的には、
・会社口座と個人口座を分ける
・会社専用のクレジットカードを利用する
・生活費は役員報酬から支払う
・役員貸付金の残高を定期的に確認する
・発生した場合は返済計画を立てる
といった対応が有効です。
また、決算書を受け取った際には、
「役員貸付金が計上されていないか」
を確認する習慣をつけることも大切です。
数字を把握することが、健全な会社経営につながります。
まとめ
役員貸付金とは、会社が社長や役員にお金を貸している状態をいいます。
創業期には発生しやすい項目ですが、放置すると、
・金融機関からの評価低下
・資金繰りの悪化
・税務上の確認事項の増加
といった問題につながる可能性があります。
そのため、
・会社と個人のお金を分ける
・役員報酬を適切に設定する
・役員貸付金を定期的に確認する
ことが重要です。
会社のお金は会社のものです。
創業期から適切な管理を行うことで、将来の融資や税務調査にも備えやすくなります。
まずは決算書を確認し、役員貸付金がないかをチェックすることから始めてみましょう。
会社の状況によって、役員貸付金の解消方法や適切な対応は異なります。
インターネットの情報だけで判断すると、かえって税務上の問題が生じる場合もあります。
決算書に役員貸付金が計上されている場合や対応に迷われている場合は、顧問税理士など専門家へ相談しながら進めることをおすすめします。
このコラムでは、日々の経営判断にすぐ活かせる実務情報を、分かりやすく発信してまいります。
今後ともよろしくお願いいたします。
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